柿渋染めの話① 柿渋染めをする理由
➊古い布を再生リユースするのに向いている。
古い布に、カビやシミなどが、ついているような場合、柿渋染めすると、そういうシミが目立たなくなるので、リユースできるようになる。
最近、よく染めているのは、帯芯(木綿)や夏帯。
帯芯は糸味の良いものがあり、染めて、バックなどを作り、夏帯は汚れが目立つものが多くて、売りづらいので、柿渋染めをして、のれんなどを作っている。
➋柿渋染めした衣は 着やすい。
・布が丈夫になる。
・防水効果があるので、雨に濡れても体にくっつきづらく、不快感が少ない。
・パリッとした風合いで、通気性が良く、肌にくっつかないので、夏の衣として優れている。
・土や枯れた草、ホコリなどが、くっつきづらく、労働着に向いている。
・汚れが目立たないし、付着しづらいので、洗濯が少なくて済む。
・石鹸を使わなくてもきれいに汚れが落ちるし、乾くのが早い。
・パリッとしているので、アイロンが不要。
・防腐効果があるので、土や薬剤などが付いても布が傷みづらい。
のれんや日傘。
柿渋染めすると水を弾くし、丈夫になる。
古いのぼりは 色が深くなって、シミが目立たなくなり、丈夫になるので、お洋服を作った。
柿渋染めの話② 麻と麻レーヨンの薄い布
写真の柿渋染めの薄い布は麻と麻レーヨン、ご注文いただいて、染めました。
こなれた布でしたので、あまり手間なく、3回目でこの色になりました。
桜の木がありますので、軽く煮染めしてから、柿渋液に入れてよくもみしごきました。
下染めすると、柿渋液が良く繊維に絡み、染着します。
時間の経過とともに、色が濃くなりますので、濃く染めずに、
この色で納品して、ご自宅で色の変化を楽しんでもらいます。
桜の木で煮たのは 繊維にシブをつけるためです。
まっさらの繊維に 柿渋はなかなか入っていかない。
きれいな茶碗に、茶渋はなかなかつきませんが、
うっすらと茶渋がついた上にはどんどん濃く付きます。
柿渋染めは、シブにシブを重ねていく作業だと思います。
まっさらな繊維には、柿渋がつきづらいのです。
ですから、桜の木である必要はありません。
煎茶等のお茶類、コーヒー、栗、
くるみ、よもぎなどシブのあるその辺の草。
でも、いろいろやってみて、桜の木で染めたときの発色が良いように思います。
今年の春、ゴミの日の草の日に
桜の木を拾いました。嬉しくて、
大事に使っています。
本当は 冬に切った桜がいい色が出ます。花が咲いた後の桜は 力がなくなっているんでしょうね。
もし 桜の木を切ることがあったら、ご一報下さい。梅とか、さくらんぼでもいいです。
浪漫屋の裏手は自宅になっていて、この時期になると、布がたくさん、
干したまま、雨が降っても取り込みません。
ご近所には変な家だと思われていると思います。
最近の雨は酸性で、
微妙な物質が含まれているらしく、、それがバイセンになっているようです。
おかげで、雨に濡れると、柿渋染めの色は しっとりと落ち着いてきます。
鉄バイセンや、チタンバイセンなど、してもいいのですが、
この自然で手のかからないバイセンが、気に入っています。
雨が降ってきて、焦って取り込まないですむのは、
面倒くさがりの私には、たいへんありがたい染めです。
柿渋染めした糸を 日の入る階段スペースにひと冬干しておいて、
春に下ろして見ると、色が深くなっています。
染めてすぐだと 色が光って見える。寝かせると、色が落ち着きます。
ゴールデンウィーク前後の
暑くなった日に 再度、染めて
売りに出します。
時間かかりますが、その値はあると思います。
栗や、くるみ、玉ねぎなど、草木染めしてから柿渋染めを染め重ねることがあります。
少し色味が足りない時に染め重ねますが、草木染めは褪色しやすいので、柿渋染めしたことで、それを防ぐことができます。
シャリ感も出るので、のり付けの手間が省けます。
お洋服に仕立てると、着心地が良くなります。
下の写真。
シミができてしまいました。
物干し棒のカバーが取れてしまい、
中の鉄分がくっついて、鉄バイセンに なってしまったんですね。
こういう時は、シミのあるところまで切って、全部、鉄ばいせんして、
グレーにしてしまう。
失敗は、染め重ねて、ごまかす。
はじめに思ってたより、良くなったりします。
それには、はじめから、濃く染めない。料理と同じですね。
料理は、最初に、塩を入れすぎて、しょっぱくすると、修正が効かなくなります。
柿渋染めは、時間と共に濃くなるので、最初から濃すぎると、微妙なグラデがなくて、変化の少ないつまらない染めになってしまいます。
手間ですが、何度も染め重ねて、日に干し、
時間をかけて、寝かせて、
深みのある染めをめざします。
太陽の紫外線が強い時、長時間
日に当てすぎると、せっかく、濃くなった柿渋染めの色が白っぽくなってしまいます。
少し休ませます。
柿渋染めは乾いたところから
色が濃くなります。
そして、その濃くなったところが、
2回目3回目に染めたときに、より濃くなります。
紫外線が 濃いところに集まるからです。
ですから、最初が肝心です。
下の写真は 失敗作の例。
洗濯バサミの跡がはっきりと
くっついてしまいました。
干し方を工夫します。
写真の右上は 洗濯物干し棒の布がかかっている箇所をぎゅっと絞った。
右下は、筒に、ぐるぐると、シワを寄せながら巻いた。
上の写真はドレープを作って、
ふんわりした微妙なグラデーションをつける。
柿渋染めの専売特許みたいな染め方です。
古布と布の手仕事 浪漫屋